恋してたら、息ができる――

NOVEL LOVE STORY

□忘れた恋のはじめ方□

忘れた恋のはじめ方 23-5

 裕史の元にかかってきた携帯にかかってきたのは、どこにいるのか居場所がわからなくなった晶の声だった。

「もしかして私の声、忘れたの?」

「晶…なのか?」

「そうだよ」

「上まであがってきてって…」

 どういう意味だよと裕史は思っていた。

「今、東京タワーの下にいるでしょ?」

「…え!?」

 なぜ自分がここにいるのが晶にわかるのか不思議に思った裕史はあたりを見渡したが晶の姿はどこにも見当たらなかった。

「ほら、早く!」

「わかった」

 裕史は携帯を切り急いで東京タワーの中へと入っていくのだった。

 そして展望台に到着した裕史が晶の姿を探しはじめると、B.C. square TOKYOのビルを眺めている晶の姿があり、裕史は急いで晶の元へとかけよっていった。

「…晶」

 今にも消えていきそうな声で裕史は晶の名前を呼んだ。

「久しぶり」

 晶は裕史に笑顔を見せた。

「久しぶりって…どうしてここに? いつ日本に? 店は?」

 裕史は晶に聞きたいことを声にすべて出しそうな勢いだった。

「ちょっと落ち着いてよ」

「落ち着いていられないよ」

「一番最初に裕史に見てもらいたくて」

「…え?」

 晶は持っていた袋の中から何かを取り出すと裕史に見せると、それは晶がデザインし海外の店からパティシエとして認められたチョコレートだった。

「これ、できたのか!?」

 裕史は驚いていた。

「うん。開けて食べてみて」

「…え?」

「ほら、早く」

「あぁ」

 裕史はゆっくりと箱を開け、中に入っているチョコレートを手にとり、一口食べた。

「どう?」

「…うまい」

 裕史が今までで一番いい表情を見せてくれたと晶は思っていた。

「よかった。裕史のその顔が見たかったの」

「…え?」

「私が作ったチョコレートを食べて喜んでくれる顔。その顔が見たくて…店、やめてきちゃった」

「や、やめた!?」

 裕史は驚いていた。

「ちょっと声大きい」

「大きくもなるよ。どうしてだよ」

「あなたのそばにいたいから」

 そう言いながら晶は目にうっすら涙をため、ポケットから何かをとりだし裕史に見せると、それは裕史から贈られた指輪だった。

「今、ここで返事をさせてください」

「…え?」

「私、早瀬晶は深沢裕史を愛しています。だから私と結婚してください」

「晶」

 裕史の目にもうっすら涙がたまり、裕史が指輪をそっと晶の左手薬指にはめ、ふたりは抱き合うのだった。

 ―1ヶ月後

 B.C. square TOKYOビルの前に、ラフな姿をした晶と裕史の姿があり、裕史は住んでいた32Fのフロアを出て、新しい部屋で晶との生活をスタートさせることを決めていた。

「これでいいんだよね」

「あぁ。俺たちにはあの部屋は広すぎる」

「だよね」

 ふたりは微笑みあった。

「晶さん!!! 裕史さん!!! いきますよ!!!」

 近くにとまっていた軽トラの窓から田所の声が聞こえてきた。

「行こう」

「あぁ」

 そんなふたりの幸せを見守るかのように、その日の空は雲一つない青い空だった。

                      ― 完
関連記事
スポンサーサイト



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログへ