恋してたら、息ができる――

NOVEL LOVE STORY

□忘れた恋のはじめ方□

忘れた恋のはじめ方 23-3

 ビルの警備員である田中がなぜ空港にいるのか晶は驚いていた。

「預かったものがあって」

「え?」

 そう言いながら田中は持っていた袋を晶に渡した。

「あの誰からですか?」

「言わなくても、早瀬さんにはわかるんじゃない?」

「そうですね」

 それが裕史からの預かりものであることに晶はすぐ気づいていた。

「元気でね」

「はい。ありがとうございます。田中さんもお元気で」

「それじゃ」

「はい」

 田中は軽く礼をすると歩いていき、晶はその後姿に深く頭を下げるのだった。

 そして晶がいる階より1つ上の階に歩いてきた田中の先にいたのは裕史だった。

「渡してきたよ」

「ありがとうございます」

 その裕史の視線の先には荷物と田中が渡した袋を持った晶の姿があった。

「直接渡さなくてよかったの?」

「はい。顔を見たら行かせたくなるから」

 そう言った裕史の表情から晶に対する思いが田中にも伝わっていた。

「深沢さん、本当に変わったね」

「はい。彼女のおかげです。彼女に出会えて本当によかったと思っています」

「それはよかった」

 ふたりは微笑みあい、裕史は歩きだそうとする晶の姿をそっと見守り続けるのだった。

 飛行機に乗ってから晶は田中から渡された袋の中を確認していくと、中に入っていたのは小さな箱でありそれが何かすぐに気づいた晶の目にうっすら涙がたまり、開けていくと指輪だった。
 そして一緒に同封されていた手紙を読みはじめた。

「何年後でもいいから日本に戻ってきた時、晶がまだ俺のことを愛してくれていたら俺と結婚してください」

「どうしてこんな大切なこと手紙で言うかな」

 そう言いながら晶は幸せそうに微笑み、遠くなっていく地上を見ながら「いってきます」とつぶやくのだった。

 ―1年後

 裕史は「ZERO-FIRST」を広太に任せ、一人旅に出ていた。
 晶がいなくなってからも社長としての任務を果たしていたが、もう少し楽な人生を送ってみたいと思うようになり、そのことを父に相談したのだ。

「わかった。裕史の好きなように生きなさい。会社のことも心配しなくていい」

「え?」

「裕史が必死でここまで守ってきた会社は私が守る。全面的にバックアップしていくから安心しなさい」

「父さん、ありがとう」

 そのことを田所や広太に伝えると、何も言わずふたりは承諾してくれたのだ。

「今の裕史さん、めちゃくちゃかっこいいですよ。ねー広太さん」

「そうですね。裕史さん、今までおつかれさまでした」

「ありがとう。これからのZERO-FIRSTは俺が一番信頼しているふたりがいるから大丈夫だな」

「これからどちらに行かれるんですか?」

「んー、まだ決めてない」

「晶さんに会いに行ってみたらどうですか?」

 広太の言葉に田所は少し驚いていた。

「じゃーいくよ」

「いってらっしゃい」

 そしてふたりは優しい表情を見せながら裕史を送りだしていた。

「まさか広太さんの口から晶さんのことがでるとは…」

「今の裕史さんがあるのは、すべて晶さんのおかげなので」

「ですね。あー俺も恋がしたい!」

「僕もです」

 ふたりは幸せそうに微笑みあうのだった。

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