恋してたら、息ができる――

NOVEL LOVE STORY

□忘れた恋のはじめ方□

忘れた恋のはじめ方 21-4

 「裕史!」と自分の名前を泣き叫んだ薫の方へ裕史は振り向いた。

「お願い。もう私から離れていかないで」

「ゴメン。俺はきみとは一緒にいられない」

「どうして? そんなに彼女のことが好きなの?」

「あぁ。俺はたとえ世界中の人を敵にまわしたとしても…早瀬晶という女性を愛してる」

 自分の気持ちをハッキリと告白した裕史の真剣な表情を見た薫は、これ以上もう無理だと思っていた。

「あなたが自分の気持ちをハッキリそこまで言う人とは思わなかったわ」

「そうだな。全部彼女のおかげなんだ」

「やっとこれであなたも幸せになれるってことよね?」

「あぁ」

「今まで…ありがとう。さようなら」

「さようなら」

 裕史は再び薫に背を向けて歩いていき、もう二度と叶うことのない恋に薫はピリオドを打つのだった。

 2週間後、晶の元に英介から連絡が入り、久しぶりにお酒を飲むことになった。

「はい、これ」

「何ですか?」

 晶は英介から差し出された封筒の中から資料を取り出していくと、それは海外に本店があり日本で行われる新作スイーツのデザイン募集要項だった。

「応募してみたら?」

「…え? ちょ、新堂さん、何言ってるんですか。無理ですよ」

 そう言いながら晶は笑った。なぜならその店は海外のコンテストで優勝を何度も経験している有名店だったのだ。

「無理だって最初から決めつけるのは晶の昔からの癖だな」

「そうですけど…これは」

「自信ないのか?」

 晶は答えなかった。

「昔の晶なら迷うことなく「はい」だった。だけど、今の晶はまるで悲劇のヒロインってところだな」

「…ですね」

 英介が何を言いたいのか、晶には身に染みるほどわかっていた。

「今の状態じゃ仕事は決まらない。晶だって本当はそう思ってるよな?」

「はい」

「だったら、これ考えてみろよ。こんなチャンス二度とないって」

「そうですね」

 そして晶を一人にして店を出てきた英介は携帯を取り出し電話をかけはじめた。

「新堂です」

 そんな英介が次に訪れた店にいたのは裕史だった。

「今、彼女に渡してきました」

「ありがとうございます」

 デザインの募集要項を見つけたのは裕史であり、薫のことがあったためどうしても自分で伝えることができない裕史は英介に頼んだのだ。

「本当にこれでいいんですか? 深沢さんから直接伝えなくても」

「はい」

 英介はクスクス笑いはじめた。

「…え?」

 裕史にはなぜ英介が笑っているのか理解できなかった。

「本当に似た者同士ですね。あなたと彼女」

「…はい」

 裕史も微笑んだ。

「なんとなくわかりました。なぜ彼女があなたに惹かれたのか。ようやくこれで私も前に進めそうな気がします。彼女を幸せにしてあげてください」

 裕史は英介も晶のことを思っているはずなのになぜ自分に対してそんなことが言えるのか驚いていた。

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